
私は、オーストラリアの語学学校・カナダの語学学校・ニュージーランドのスパで働いた経験があり、現在は日本のインターナショナルスクールで働いています。
最初は、海外の人の仕事に対する考え方と日本人の仕事に対する考え方の違いに驚きの連続でしたが、海外経験を数年積み日本に帰国してみると、「実は海外のような働き方や仕事に対する考え方を求めている?」と思わせる若者にたくさん出会いました。
ということでこの記事では、私が現地で感じた、日本と海外の働き方の違いと仕事に対する考え方の違いを紹介したいと思います。
目次
- 1 「それ、私の仕事じゃないんで」と普通に言う
- 2 緊急事態/組織の問題解決/決断を下すのは上の仕事!彼らはその分給料をもらっているんだ
- 3 不可能なものは不可能!できないものはできない!
- 4 お客様は1人だけじゃない!ギリギリに連絡してくる方が悪い
- 5 会社のために身を粉にして働かない・人も自分も犠牲にしない
- 6 妊娠中のスタッフがいたら最優先
- 7 人間はミスをする生き物、仕事のやり方に問題があるんだ。
- 8 終業時間6時とは、6時まで働くことじゃない、6時に会社から出ることだ!
- 9 有給休暇は早い者勝ち!「この日休みください」と言ったもん勝ち!
- 10 Q:「なぜストレス溜まらないの?」 A:「僕の問題じゃないから」
「それ、私の仕事じゃないんで」と普通に言う
海外で働いている人たちの間で頻繁に耳にする話の代表と言えば、
「コーヒー買ってきて」
「ランチ買ってきて」
「お茶入れてくれない?」
という上司や先輩からの仕事のお願いに、「その仕事、私のJob Description(ジョブ・ディスクリプション)に載ってないので」と言ってお断りする話。

最初は私もそう思いましたが、オーストラリア・カナダ・ニュージーランドの3つの国で聞いた話なので、海外ではよくあることなのです。
緊急事態/組織の問題解決/決断を下すのは上の仕事!彼らはその分給料をもらっているんだ
語学学校でオフィス勤務をしていた時のこと。緊急事態が発生し、日本人ディレクターから夜中に出動命令が出ました。
でも後日、別な語学学校に勤めるマネージャーから「その仕事をあなたに頼むのはおかしいわ!それはあなたの仕事じゃないのに!」と教えられ、心が救われた記憶があります。
日本では、新人に自分がやりたくない仕事をさせたり、本来の責任以上の仕事を押し付けられても仕方ないと引き受けてしまうことが多いのですが、私が海外で教わったことは、人の上に立つ人たちは平社員よりも多くの給料をもらっていて、その分大きな決断を下さなければならず責任も背負っているということ。
責任が重い仕事や緊急事態の対応などが立場の弱い社員に降ってくる場面で、「それは上の仕事だよ!彼らはその分給料もらっているんだ!」と、弱い立場である社員の味方をしてくれる人がいることは理想の環境です。
不可能なものは不可能!できないものはできない!
海外でも日本でも、取引先やお客様から、「もっと早くできますか?」「時間がないんですけど何とかなりませんか?」と急かされ、相手のペースに巻き込まれて消耗する状況がよくあります。
大して急ぎでもないのに、金曜日の終業時間2時間前に「今目の前にお客様がいるので、この処理できますか?できるまでこちらは待つので」と、自分の仕事を何としてでも最優先でやってもらうために電話をつないだまま切ってくれない取引先も存在しました。
そんな状況でも海外では、「今担当者がいないので…」と言って終わってしまってOK。
日本では、相手の要望を叶えようと最善を尽くすことが良しとされますし、日本人ならそこで頑張ってしまうのもわかります。
ですが海外に行くと、自分の仕事の境界線・仕事の範囲が(日本よりも)ハッキリしているので、その範囲を超えてまで仕事をする必要はありません。
不可能なものは不可能!できないものはできない!
不可能を可能に変えるのは、映画の中のトム・クルーズだけでいいのです。

お客様は1人だけじゃない!ギリギリに連絡してくる方が悪い
海外のオフィスで「金曜日の終業時間2時間前」と言ったら、すでにビールで乾杯をはじめている人もいる時間。
ちょっとしたフィンガーフード(軽食)やドリンクが出て、スタッフ同士のコミュニケーションを図る部署もあります。
人によっては、翌週に仕事を残さないためにやり残した仕事をさっさと片付けようと、「仕事の整理」をしている時間帯ですね。
そんな時に、取引先やお客様から「今この処理お願いします!やってください!」という命令のような電話を受け、それに対応しようと現地の担当者に協力を仰ぐと、同僚から次のような言葉が飛んできます。
そうです、処理待ちのお客様(取引先)はたくさんいて、そういった人たちは前々から連絡してきています。
電話をつなぎっぱなしにして人の時間を奪うような方法で仕事をお願いされても、現地のスタッフは日本人のように必要以上の努力はしません。
でもそれって、時間に余裕を持って計画的に仕事依頼をしてくれている取引先や他のお客様に対しても、本当の意味でフェアなんだと思います。
会社のために身を粉にして働かない・人も自分も犠牲にしない
「会社のために身を粉にして働かない」ということを身をもって学んだのは、ニュージーランドのスパ受付の仕事でのこと。
ただのレセプショニスト(受付)なのに1人でお店を回すため、「オペレーションマネージャー」的な業務も含まれており、スタッフを動かす経験もしました。
「会社のために身を粉にして働かない」という考えが当たり前の海外では、「○○が体調不良で休みになったので、代わりに出勤できませんか?」とお願いしても、「予定も何もないけど嫌だから断る」と言われる時もあります。
でもそれは、「明日無理して1日頑張って(体力的にも精神的にも)潰れるなら、この先長く働き続けた方が会社にとって利益でしょ?」という考えから来るもの。
決してやる気がないわけではありません。
目の前にある業務に忙殺されながら、自分を犠牲にして会社に貢献することが「会社のことを第一に考えて働く」ではないですし、日本的な「仕事第一」という考えとは違うのです。
そんな環境で、常にギリギリの余裕がない運営をすると、
- トラブルや予想外の出来事に遭遇した時に欠員補充ができなくなる
- 日ごろから馬車馬のように働かせたり使い捨て感覚で仕事を割り振ると後に協力してもらえなくなる
というように、最終的に自分の首を絞めることになります。
スタッフを守るという意味でも、自分を守るという意味でも、「身を粉にして働かない」「人も自分も犠牲にしない」というスタンスが大事だとつくづく実感しました。

妊娠中のスタッフがいたら最優先
ニュージーランドのスパ受付のトレーニング期間中のこと。
妊娠中(安定期)の女性セラピストの体調がおかしい!という状況に遭遇しました。
週末の予約でいっぱいの時間帯、待機のスタッフもいない、もうあと2~3分でトリートメントが始まる時間、数ヶ月前からその日のガールズナイトのためにグループで予約のお客さんたちはもうお店に来ている…
その時受付で一緒に入っていた先輩は、正直に状況をお客さんに伝え、「この中の誰か一人はトリートメントが受けられません」と伝えました。
お客さんからは大ブーイング、怒りまくっていたため全員キャンセル、もちろん苦情になりましたし、お詫びとして全員に60分のトリートメント無料バウチャーをあげることに…。
この状況が日本で起こったら、「なんでこんな時に体調崩すかな…」とか「迷惑」という言葉が誰かの口から出てくることがありますが、ニュージーランドで働くその先輩はこう言いました。

人間はミスをする生き物、仕事のやり方に問題があるんだ。
語学学校で働いていた時のこと、英語の先生から「ミスをすること」についての話をされました。
先生の元同僚が業務遂行中にミスをし、誰もが「彼のせいだ!」という中で、当時のマネージャーは誰のことも責めずにこう言ったのです。
先輩が自分のミスを後輩に押し付けたり、責任転嫁が当たり前の社会で、「仕事のプロセスに問題がある」という考えが広まったら、働くことがもっと楽になるのではないかと思います。
終業時間6時とは、6時まで働くことじゃない、6時に会社から出ることだ!
ニュージーランドのスパで働いていた時のこと。
リッチな人が集まるエリアの店舗で働いていました。
最終予約のスロットは7時台まであるのですが、リッチなエリアでは6時を過ぎる予約はほとんど入ることがありません。
6時以降の予約が入らなかった場合、本来6時30分の終業時間が6時となるのですが、私が働いていたニュージーランドのスパでの「終業時間6時」は、仕事を終わらせる時間ではありません。
「6時には店の鍵を閉めて、お店から出る」という時間のことなのです!
日本なら、終業時間が6時の場合、ギリギリまで電話に出たりメールを返信するのかもしれませんが、そのスパでは
↓
15分前になったらもう電話は取らない、メールの返信は次の日
↓
5分前には荷物を全部まとめて受付に持ってくる
↓
2~3分前には本日の業務終了、パソコンのシャットダウンの準備
↓
6時には看板をClosedにしてフロントドアに鍵をかけ「See you tomorrow~」
みんな、家族や大切な人との時間を過ごすため、さっさと帰路につくのです。
有給休暇は早い者勝ち!「この日休みください」と言ったもん勝ち!
日本で働いていると、
- 有給休暇が取れない
- 有給休暇を申請しても承認されない
ということはよくあると思いますが、人によっては「休みをください」と言えない人もいますよね?
私も昔は、「できるだけ協力します」と休日を減らしてまで自分を犠牲にして働き、いつの間にか消耗していたということがありました。
でも海外で働いてみて、3週間~6週間平気で休みを取ったり、同じ時期に仕事を始めた人が希望を出していたり、しかもその希望がすべて叶っていたり…という場面に何度も遭遇し、「あれ、休み申請しても大丈夫かも?」と思うようになりました。
思いっきりリフレッシュすることは、働くモチベーションを維持するために必要不可欠なのです!
Q:「なぜストレス溜まらないの?」 A:「僕の問題じゃないから」
オーストラリアの語学学校でマーケティングの仕事をしていた時の話。
毎日毎日、日本人の生徒がホームステイのトラブルで相談に来ていました。
「こんなにトラブルが勃発するのに、ホームステイコーディネーターはなんで顔色一つ変えずに仕事をしているんだろう?」
そう思ったので、思い切って聞いてみることに…


そうです。
ホームステイコーディネーターは、ホームステイの手配・ホームステイ先での過ごし方のアドバイス・何かあったら相談にも乗るけれど、ホームステイのトラブルは生徒とホストファミリーの問題。
この考え方を学んでから自分の中に取り込むまで5年以上の年月がかかりましたが、今では「それ、私の問題じゃないので」と思えることが確実に増えました(笑)
「他人の問題は他人の問題」と切り離せていない人、案外多いのかもしれませんね。