海外就職を目指す人なら必ず通る「海外面接」。
初めての人にとっては未知の世界で、日本と海外の面接にはどんな違いがあって、どんな流れで面接が進むのか、漠然と不安を抱くこともあると思います。
現代では日本でも「英文履歴書」の提出を求める企業があったり、英語力を確認するために「英語面接」があるなど、身近になりつつあります。
しかし、日本の面接では「一般的な回答例」とされていることが、海外面接ではマイナス評価に繋がることがあったりするので、注意が必要です。
そこでこのページでは、20代でオーストラリア・カナダ・ニュージーランド・マレーシアの4ヵ国で現地の会社の「営業・マーケティング」のポジションに体当たりで挑んだ私が、数々の面接を受けてわかった「日本と海外の面接の違い」についてをまとめます。
「海外4ヵ国」とまとめていますが、日本とは違う多民族国家での面接なので、面接官の人種・国籍はバラバラです。細かく分けられないことをお許しください。
日本と海外の面接の違い10選
まずは、「日本での面接・日本人担当者との面接」と「海外での面接・外国人担当者との面接」の違いについてお話しします。
- TOEIC無意味説…英語は話せなきゃ意味がない
- 空白期間の徹底確認は日本だけ
- 海外ではNG!将来の結婚予定/結婚歴/パートナーの有無の質問
- 海外面接はスキルや経験・業務に関する質問が9割以上
- 日本の面接時間は少し長い傾向がある
- 応募書類の数が原因?日本の面接は流れが悪い
- 海外では「ポジションに相応しい適性や特徴」を理解して長所・短所を答える
- 面接で見抜けるわけがない?ミスマッチは採用担当者の責任!
- 海外面接は突然打ち切りも…日本の候補者は最後までお客様
- お給料はすでに決まっている?交渉可能?
1.TOEIC無意味説…英語は話せなきゃ意味がない!
海外の現地の会社で働く上で、最低限必要になるのは英語力です。
日本では「TOEIC®L&R は国際的な英語の資格」と言われており、英語力の証明としても「TOEIC®L&R」のスコアが重視されいますが、実は海外に出ると、韓国と日本でしか積極的に採用されていないということがわかり、使い物にならないと気付きます。
海外でスタンダードな英語の試験といえば、
- IELTS
- TOEFL
- ケンブリッジ
で、TOEIC®L&R は日本と韓国以外では知名度が低いです。
また、TOEIC®L&R は「リスニング」と「リーディング」の試験のみですが、海外の現地企業で働くなら英語が話せることが前提となり、そもそも面接自体が英語になります。
上記の英語の検定試験には「TOEIC®L&R に換算すると○○○点ぐらい」という基準が用意されていますが、「TOEIC®L&Rで言うと何点ぐらいですか?」という質問をするのは日本人担当者のみです。
※日本人の面接官でもグローバルな環境で活躍されている方は、IELTSやケンブリッジの基準で話しても通じるのでご安心ください。
また、私が海外で仕事を探していた時は、
- TOEIC®L&R 900点以上
- ケンブリッジ大学英語検定 CAE以上
といった高いスコアを持っていないなら履歴書に書かない方がいい!とアドバイスされました。
2.空白期間の徹底確認は日本だけ
「日本での面接・日本人担当者との面接」と「海外での面接・外国人担当者との面接」の違いで特徴的なことの2つ目は、履歴書に書かれていない空白期間の徹底確認は日本だけという点です。
もちろん日本でも、能力や経験重視の企業ならサッと確認する程度だったり、経験値が高い応募者の場合はほとんど触れられないこともあります。
また、海外の就職活動で利用する英文履歴書は「ターゲットCV」と言って、応募するポジションに合わせてその都度作り変えるので、業務内容と深く関係のない職歴は削除することもあり、それが理由で空白期間ができることもあります。
「空白期間に対する質問にどう答えるか?」を事前に用意しておき素直に答えることは、海外の現地企業を受ける場合も日本の企業を受ける場合も同じです。
しかし私の経験上、海外の面接で担当者から「空白期間」の確認をされたことはありません。
「履歴書に書かれていない空白期間を質問するか?」について、オーストラリアのマーケティングマネージャー・カナダの人事マネージャー・ニュージーランドの事業開発マネージャーに聞いたところ、
- 移民が多い国や都市では空白期間があることが普通
- 家族で他国に移住・パートナーの海外赴任などの理由で国をまたぐ人が多いのがグローバル環境
- 結婚・妊娠・出産という人生のステージの変化かもしれないので聞かない
といった回答が得られました。
海外面接では、面接に来る人の国籍もバックグラウンドも国の事情もバラバラなので、業務に関係のない質問はほとんど聞かれません。
「自社で何ができるのか?どう貢献できるのか?」を見極めることが、面接において重要なのです。
3.海外ではNG!将来の結婚・出産予定/結婚歴/パートナーの有無の質問
海外で空白期間の確認をしない理由の一つである「結婚・妊娠・出産という人生のステージの変化かもしれないのであえて聞かない」という点に関して深堀すると、海外では「結婚・妊娠・出産・パートナーの有無」といった質問は、場合によってセクハラになる可能性があります。
日本の面接でも近年は注意するようになってきましたが、会社が指定する応募書類フォームで「既婚・未婚」の回答欄があったり、面接で「将来の結婚・出産予定」や「パートナーの有無」といったプライベートな質問をされることもゼロではありません。
妊娠した同僚に対して「なんで今なの?」と言っていたり、ハラスメントが横行していることは日本の特徴でしょう。
しかし、英語圏3ヵ国のマネージャークラスの人たちは、「社員の人生ステージが変わる時は、希望があれば勤務時間や雇用形態について話し合いの場を持ち、スタッフが働きやすいように対応する」という柔軟な考えを持っています。
4.海外面接はスキルや経験・業務に関する質問が9割以上
海外の面接でも日本の面接でも、
- 面接は簡単な自己紹介から入る
- 業務に関する話が中心
といった点は共通です。
しかし海外面接では、スキルや経験に関する質問が9割以上を占めます。
また、面接は落とすためのものではなく、採用を想定して話を進めることが前提で、テクニカルな質問も多く、それを英語でこなすので疲労感が半端ではありません。
しかし、個人経営の会社の面接や、転職活動をする国によっては、業務内容だけでなくちょっとした雑談やジョークが入ってくることもあります。
プライベートなことは聞かれませんが、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるようなコミュニケーションが重要なのは世界共通です。
5.日本の面接時間は少し長い傾向がある
面接時間の長さについて言うと、海外の面接と比べて、日本の面接は所要時間が少し長い傾向があります。
その理由は、日本の面接に「履歴書の空白期間の確認」や本来聞かなくてもいい「プライベートな質問」が含まれているからです。
ただし、海外の面接で所要時間が1時間になる場合、働くことを想定して現場を見せてもらったり、社内を案内してもらうことがあります。
その場合は、採用の可能性が高い候補者だからとプラスに捉えて大丈夫です。
6.応募書類の数が原因?日本の面接は流れが悪い
日本での面接や日本人面接官との面接で気付いたことは、面接官が面接中に履歴書に目を通す時間が長い点です。
その原因の一つは、応募書類の数と履歴書のフォーマットにあると思います。
日本の就職活動の応募書類で用意するものは、
- 送付状
- 職歴や学歴・資格・志望動機を書く「履歴書」
- これまでの業務内容や実績を書く「職務経歴書」
- ポジションによっては「ポートフォリオ」
といった4点です。
外資系企業・グローバル企業・英語業界の求人に応募する場合、上記4点に「英文履歴書」が追加され5点になることがあります。
日本の履歴書フォーマットは時系列に職歴を書いていくだけなので、面接担当者によっては「履歴書と職務経歴書を行ったり来たり」することも珍しくありません。
また、履歴書の記載は「古い順」、職務経歴書の記載は「新しい順」と順番が逆な点も面接官に負担をかけます。
さらに、日本の履歴書作成では、3ヶ月以上勤務した企業の職歴は書かなければいけないので、応募するポジションに関係のない職歴まで記載されていることもあります。
海外の就職活動で使う応募書類は、
- 自己PRや自分を売り込むための「カバーレター」
- A4サイズの紙に職歴と業務内容が簡潔にまとまっている「履歴書」
- ポジションによっては「ポートフォリオ」
が基本なので、必然的に「紙」の枚数が少なくなります。
そう考えると、応募書類の枚数やフォーマットのせいで面接中の流れに違いが出てくるのです。
7.海外では「ポジションに相応しい適性や特徴」を理解して長所・短所を答える
日本での面接と同様に、海外面接でも長所と短所を聞かれることがありますが、海外面接では「ポジションに相応しい適性や特徴」を理解して答えることが一つの戦略となります。
私の失敗例で説明すると、海外面接で「短所」を聞かれた際、日本で就職活動をするときによく使っていた「完璧主義」の長所への言い換えを実践しようとしたら、面接官からすかさず以下のように言われました。
日本で「完璧主義」は、几帳面できっちり仕事をこなせると考えられており、短所→長所に言い換えが可能です。
しかし海外では、様々なバックグラウンドの人が働いており、「チームプレイ」や「寛容性」を求められるため、日本で通用する「完璧主義」の例が通せず逆にマイナスになると学びました。
「完璧主義」の他にも、日本で良しとされていることが海外ではNGになることはよくあります。
そこでやらなければいけないことは、そのポジションに相応しいとされる特徴は何か?を考えて長所・短所を答えることです。
私が失敗した「完璧主義」の話を深堀すると、応募した営業・マーケティングのポジションは、お客様から断られても、
「きっと今は忙しいんだろう」
「腹の虫の居所が悪いんだろう」
などと楽観的に考えられる人の方が合っていると言われています。
「完璧主義」という特徴は、数字のミスや誤字脱字が少ない方が有能とされるバックオフィス系のポジションだと発揮しやすいと聞きました。
また、営業をして何度も断られることを「自分が悪いんだ」と責めてしまう傾向もあるため、フロントポジションでは活かされず、逆に離職に繋がることも多いようです。
そういった「ポジションに必要な適性」を短所・長所に盛り込んで答える方が面接で上手くいく可能性が上がります。
8.面接で見抜けるわけがない?ミスマッチは採用担当者の責任!
海外では、求人募集をかけると採用担当者に100通以上(多いと200~400通)の応募メールが届く話をよく聞きます。
日本の面接では、「とりあえず会って話す」といったケースもありますが、海外では基本的に興味がある候補者がいたら履歴書をちゃんと読み求めている人材に当てはまるかどうかを検討してから面接に呼ぶことが前提です。
採用した人材でミスマッチがあった場合、日本の人事担当者の中には「面接で見抜けるわけがない」と話す人がいたり、シレッと応募者に責任を取らせようとしたり、上手く逃げたり片づける人もいますよね。
しかしこれが海外になると、採用した応募者が相応しくないと社内で不満が出たら「私がいいと思って採用したのだから文句があるなら私に言って」とかばってくれるマネージャーの話をよく聞きます。
面接や採用は担当した人の責任ですが、日本と海外の面接では担当者の責任感に違いがある点は明白です。
※日本の採用担当者にも責任感がある人や誠実に対応してくれる人がいる点を付け加えさせてください!
9.海外面接は突然打ち切りも…日本の候補者は最後までお客様
日本の面接では、面接の途中であからさまに打ち切られることは(よっぽどでなければ)ないかと思います。
日本の場合、「落とす予定の候補者にはいい企業イメージを持ったまま帰ってもらう」という文化が根付いており、面接をする採用担当者の話すトーンに大幅な波がなく、最後まで丁寧なことが多いです。
しかし海外では、面接が突然打ち切りになる話は珍しくありません。
その原因は、ほとんどのケースで、採用担当者が応募書類や応募メールをちゃんと読まなかったことで起こっています。
本来海外の現地企業は、求人広告を出せば応募が殺到し、履歴書やカバーレターを読んで「ポジションに相応しい人」を面接に呼ぶことが前提です。
面接に呼ぶ前の段階でミスマッチを引き起こす企業は、たいていの場合いい企業ではありませんし、人気の求人でもないと言えるでしょう。
10.お給料はすでに決まっている?交渉可能?
日本の面接では、企業側から「年俸○○○万円」「月収○○万円」と提示され、必要であればそこから交渉することが多い傾向があります。
しかし海外では、求人票に金額を表示せず「Negotiable(交渉可能)」と書かれている求人もよく見かけます。
業務内容がこれまでの職歴と合致していて興味がある求人なら、求職者にとっては「応募したい求人」ですよね。
給与額が記載されていない求人を受ける際に重要なのは、希望する職種の給与相場を把握したり、応募する企業で働いている人の給料情報を入手して自力で交渉することです。
とくに外国人は足元を見られることも多く、相場よりも低い金額を提示されることがよくあります。
また、日本人は他国の人と比べて自信がない傾向があったり、「英語力」が劣っているせいで「まぁこんなもんか…」とあきらめてしまう部分もあるでしょう。
しかし、私がお世話になったマーケティングマネージャーからは、「英語力は関係ない!英語力がある人を雇うならネイティブを雇う」と言われたことがありました。
もちろん、ある程度の英語力は大事ですが、採用する基準はそれだけではありません。
とくに日本人は、真面目・勤勉・時間を守る・誠実に仕事をするので、普通に働いているだけなのに気に入られることがよくあります。
【海外面接の流れ】よく聞かれる質問
それではここで、海外面接の流れとよく聞かれる質問についてお話しします。
自己紹介(Tell me about your self=あなたのこと教えて!)
↓
面接でよく聞かれる一般的な質問
- 志望動機
- 会社への興味
- なぜ自分がこのポジションに相応しいと思うのか
- etc……
↓
過去の実績に関する質問
- これまで経験した業務
- 仕事の中で達成したこと
- そこから何を学んだか?
- etc……
↓
問題解決能力・対応力に関する質問
- 社内で口論があったらあなたはどうする?
- 上司と意見が合わなかったらどうする?
- お客様は神様だと思うか?
- 無茶な要求をしてくるお客様にはどう対応するか?
- etc……
↓
応募先の業務内容の確認をしながらテクニカルクエスチョン
- この業務は経験したことある?
- 経験がない場合、他の経験で補える経験はある?
- 〇〇というソフトの使用経験は?
- etc……
↓
条件や勤務時間などの確認
※基本的には採用を目的とした面接になるので質問自体は前向き、そしてかなり細かい
海外面接でも、基本的に日本の面接と似た流れになりますが、面接官は様々なバンクグラウンドを持つ人を面接するので、1つ1つの経験を語る時に具体的な例を用いて、相手に理解してもらえるように説明できると良いです。
また、経験に関する質問に答える時は、次のような構成で話すことが理想とされています。
- 事象が起こったシチュエーションを話す
- あなたが何をしなければいけなかったのか「課題」を話す
- その課題をクリアするためにどんな行動を取ったのか?
- 最終的な結果
過去の辛かった話、問題や新しい課題にぶつかった時に乗り越えた話をすると、適応能力と問題解決能力を同時に伝えることが可能です。
海外面接でも「日系企業」「現地企業」「面接官」により変わる
ここまで、「日本と海外の面接の違い」についてまとめました。
海外で受ける面接を「海外面接」とひとくくりにしていますが、
- 日系企業を受ける場合
- 現地企業を受ける場合
- 面接官が日本人の場合
- 面接官が現地の人や外国人の場合
によって、所要時間や進め方が異なります。
海外の日系企業を現地採用で受けるなら、面接官は日本人の可能性が高くなりますので、日本の面接対策の方が役に立つでしょう。
しかし日系企業の面接でも、現地の人や海外から赴任してきた外国人が面接官の場合もあります。
どちらにしても言えることは、海外面接の準備(特に経験やスキルや過去の業務内容についてのボリュームを増やしておくこと)をしっかりしておけば、日本用の面接に切り替えることは比較的楽ということです。
国や面接官によって傾向・違いはありますが、少しでも海外で就職活動を考えている方の参考になれば幸いです。