私は、オーストラリアの語学学校・カナダの語学学校・ニュージーランドのスパで働いた経験があり、現在は日本のインターナショナルスクールで働いています。
海外で初めて働いたばかりの頃は、現地の人の仕事に対する考え方と、日本人の仕事に対する考え方の違いに驚きの連続でした。
ですが、海外経験を数年積み日本で働いている現在、多くの日本の若者が海外のような働き方や仕事に対する考え方を求めているように感じます。
そこでこの記事では、私が現地で感じた、日本と海外の働き方の違いと仕事に対する考え方の違いを紹介したいと思います。
日本と海外の働き方の違い/仕事に対する考え方の違い
1.海外では自分の仕事じゃなければ断る
海外で働いている日本人の間でよくに耳にする話の代表と言えば、自分の仕事じゃなければ「それ、私の仕事じゃないんで!」と断る話。
例えば、上司や先輩から
「コーヒー買ってきて」
「ランチ買ってきて」
「お茶入れてくれない?」
というお願いされたとしても、入社する時にサインしたJob Description(ジョブ・ディスクリプション=業務内容が書かれた書類のこと)にその業務内容の記載がなければ「その仕事、私のJob Description(ジョブ・ディスクリプション)に載ってないので」と言ってお断りするのは当たり前です。
最初は私もそう思いましたが、オーストラリア・カナダ・ニュージーランドの3つの国で同様の話を聞いているので、海外ではよくあることだと認定できると思います。
2.緊急事態/責任の重い仕事はお金をもらっている上の仕事!
語学学校で日本人カウンセラーをしていた時のこと。生徒が交通事故で病院に運ばれ、日本人ディレクターから夜中に電話があり「病院行ってきて!」と出動命令が出ました。
一緒に住んでいたカップルの奥さんが別な語学学校のマネージャーだったのですが、夜中に突然出かけ帰宅した私に気づき、事情を説明したところ「その仕事をあなたに頼むディレクターがおかしいわ!それはあなたの仕事じゃないわよ!」と教えてくれました。
そして、同じ職場のオフィス内でも現地の人は意見が同じで、「それは上の仕事だよ!彼らはその分給料もらっているんだから、あなたはやる必要ない!」と味方してくれたのです。
日本では、上司や先輩がやりたくない仕事を新人(若手)にさせるのはよくあること。
自分の仕事の線引きがまだできない新人(若手)なら、本来の責任以上の仕事を押し付けられても「仕方ない」と引き受けてしまうこともあると思います。
ですが、私が海外で教わったことは、人の上に立つ人たちは平社員よりも多くの給料をもらっていて、その分大きな決断を下し責任も背負っている。だから、押し付けられてもやる必要はない!ということです。
3.不可能なものは不可能!できないものはできない!
海外でも日本でも、取引先やお客様から、「もっと早くできますか?」「時間がないんですけど何とかなりませんか?」と急かされ、相手のペースに巻き込まれて消耗する状況がよくあります。
急ぎでもないのに、「今目の前にお客様がいるので、この処理できますか?できるまでこちらは待つので」と、自分の仕事を何としてでも最優先でやってもらうために、電話をつないだまま切ってくれない取引先も存在しました。
そんな状況でも海外の現地の人は、頑張ればできるかもしれないけどやらない。それが普通です。
日本では、相手の要望を叶えようと最善を尽くすことが良しとされますが、海外では自分の仕事の境界線がハッキリしているので、そのラインを超えてまで仕事をしないようです。
不可能なものは不可能!できないものはできない!
4.お客様は1人だけじゃない!ギリギリに連絡してくる方が悪い
海外のオフィスで「金曜15:00」と言えば、すでにビールで乾杯をはじめている人もいる時間(多分、職場による)。
ちょっとしたフィンガーフード(軽食)やドリンクが出て、スタッフ同士のコミュニケーションを図る部署もあります。
海外の日系企業勤務の日本人からは「まだ勤務時間内なのにおかしいでしょ!?」と言われますが、彼らは日本の文化には合わせません。
私は日本人なので、日本のクライアントから「今この処理やってください!お願いします!」と言われたら対応してしまう…そんな時、どうしても現地の担当者のヘルプが必要で協力を仰ぐと、次のような言葉が飛んできます。
そうです、処理待ちのお客様(取引先)はたくさんいて、そういった人たちは前々から連絡してきています。
電話をつなぎっぱなしにして人の時間を奪うような方法で仕事をお願いされても、現地のスタッフは日本人のように必要以上の努力はしません。
でもそれって、時間に余裕を持って計画的に仕事依頼をしてくれている取引先や他のお客様に対して、本当の意味でフェアなんだと思います。
5.会社のために身を粉にして働かない・人も自分も犠牲にしない
「会社のために身を粉にして働かない」ということを学んだのは、ニュージーランドのスパ受付の仕事でのこと。
体力勝負のセラピストは、体調を崩してしまうことも時々あるのですが、誰かが体調を崩した場合、欠員分のセラピストの手配をするのは受付の仕事です。
お店には専属のスタッフがいるので、まずは同じ店舗の他のスタッフに穴埋めをお願いするのですが、体調を回復させるための貴重な休みの日に出勤をお願いしても、断られることがありました。
でもそれは、「明日無理して1日頑張って、私が体力的にも精神的にも限界を迎えるよりも、この先私が長く幸せに元気に働き続けた方が、会社にとって利益でしょ?」という考えから来るもの。
決してやる気がないわけではありませんし、理にかなっています。
目の前にある業務に忙殺されながら、自分を犠牲にして会社に貢献することが会社のことを第一に考えて働くことではないですし、日本的な「仕事第一」という考えとは違うのです。
そんな海外の環境で、ギリギリの余裕がない運営をすると、
- トラブルや予想外の出来事に遭遇した時に欠員補充ができなくなる
- 日ごろから馬車馬のように働かせたり使い捨て感覚で仕事を割り振ると後々協力してもらえなくなる
というように、最終的に自分の首を絞めることになります。
スタッフを守るという意味でも、自分を守るという意味でも、「身を粉にして働かない」「人も自分も犠牲にしない」というスタンスが大事だとつくづく実感しました。
6.妊娠中のスタッフはお客様より大事
※ここでのお話は、もちろんお客様は大事という大前提のもとで話しますが、それ以上に、仲間である妊娠中のスタッフの身体や体調の方が大事というお話です。
ニュージーランドのスパ受付のトレーニング期間中のこと。
妊娠中の女性セラピストが出血して体調がおかしい!という状況に遭遇しました。
予約でいっぱいの週末の夜時間帯、待機のスタッフもいない、もうあと2~3分でトリートメントが始まる時間、その日のガールズナイトのために数ヶ月前からグループ予約をしていたお客さんたちはもうお店に来ている…
その日の受付のシフトにメインで入っていた先輩は、妊娠中のスタッフの状況を正直にお客さんに伝え、「この中の誰か一人はトリートメントが受けられません。申し訳ございません。」と謝りました。
お客さんたちからは大ブーイング。
怒り心頭で全員キャンセル、もちろん苦情になりましたし、お詫びとして全員に60分のトリートメント無料バウチャーをあげることになりました。
こんな状況が日本で起こったら、「なんでこんな時に体調崩すかな…」とか「迷惑」という言葉が誰かの口から出てくることがありますが、ニュージーランドで働くその先輩はこう言いました。
私は日本で、妊娠中のスタッフに冷たい女性スタッフを何度も見てきたので、自分の目の前に「妊婦さんにも優しい職場の先輩」が目の前に現れて救われた気がしました。
7.【人間はミスをする生き物】仕事のやり方に問題がある
語学学校で働いていた時のこと、英語の先生から「ミスをすること」についての話をされました。
先生の元同僚が業務中にミスをし、誰もが「彼のせいだ!」という中で、当時のマネージャーは誰のことも責めずにこう言ったのです。
もしかしたら、こういったマインドで働く日本人もいるかとは思いますが、残念ながら私が住んだことのある日本5都市ではまだ出会っていません…。
先輩が自分のミスを後輩に押し付けたり、責任転嫁が当たり前の社会で、「仕事のプロセスに問題がある」という考えが広まったら、働くことがもっと楽になりますよね。
8.有給休暇は早い者勝ち!「この日休みください」と言ったもん勝ち!
日本で働いていると、
- 有給休暇が取れない
- 有給休暇を申請しても承認されない
ということはよくあえいますが、人によっては「休みをください」と言えない人もいますよね。
私も昔は、「できるだけ協力します」と休日を減らしてまで自分を犠牲にして働き、いつの間にか消耗していたということがありました。
でも海外で働いてみて、3週間~6週間平気で休みを取ったり、同じ時期に仕事を始めた人が平然と休み希望を出していて希望が叶っていたり…という場面に何度も遭遇し、「あれ、休み申請しても大丈夫かも?」と思うようになりました。
その時感じたことは、「休みください!」って言ったもん勝ちということ。
有給休暇が欲しいと思ったら、他の人よりも先に言わないと、自分自身のホリデーが取れなくなります。
思いっきりリフレッシュすることは、働くモチベーションを維持するために必要不可欠なのです!
9.ストレスが溜まらないのは「仕事の問題は自分の問題じゃない」から
オーストラリアの語学学校でマーケティングの仕事をしていた時の話。
毎日毎日、日本人の生徒がホームステイのトラブルで相談に来ていました。
「こんなにトラブルが勃発するのに、ホームステイコーディネーターはなんで顔色一つ変えずに仕事をしているんだろう?」
そう思ったので、思い切って聞いてみることにしました。
そうです。
ホームステイコーディネーターは、ホームステイの手配・ホームステイ先での過ごし方のアドバイスが主な仕事で、何かあったら相談にも乗るけれど、ホームステイのトラブルは生徒とホストファミリーの問題。
ホームステイコーディネーターが何とかしなければいけない時は、生徒から「ホームステイ先変更してください!」と依頼があった時です。
この考え方を学んでから自分の中に取り込むまで、ある程度の年月がかかりましたが、今では「それ、私の問題じゃないので」と思えることが確実に増えました。
それでも、すべての問題をごっちゃにして、まるごと投げつけてくる人もいるのですがね…。
日本で実践してみた結果
- 海外では自分の仕事じゃなければ断る
- 緊急事態/責任の重い仕事はお金をもらっている上の仕事!
- 不可能なものは不可能!できないものはできない!
- お客様は1人だけじゃない!ギリギリに連絡してくる方が悪い
- 会社のために身を粉にして働かない・人も自分も犠牲にしない
- 妊娠中のスタッフはお客様より大事
- 【人間はミスをする生き物】仕事のやり方に問題がある
- 有給休暇は早い者勝ち!「この日休みください」と言ったもん勝ち!
- ストレスが溜まらないのは「仕事の問題は自分の問題じゃない」から
海外3ヵ国の現地の会社で働いてみて、働くことに対する考え方が変わりましたが、実際に日本で実践してみて、私は「職場のお局様」と「上司や組織の圧力」に屈しました。
自分の生活がかかっていたり、長く働くために周囲との人間関係を考えると、どうしても同調しなければ生き抜けないこともあるのが現実で、今このページを読んでいるすべての人に事情ってものがありますよね。
でも最近、失礼なお客様に対して「全然お帰りいただいて結構ですよ」と言えてしまう、海外経験のない日本人の若者に出会って、働く場所の問題でも環境の問題でも周りの問題でもなく、結局は自分の線引きの問題なんだと思いました。
もし、海外の働き方や仕事に対する考え方が自分にしっくりくるのであれば、まずは実践してみる。
↓
それでも同調を求められて、同調することが自分に合わないのであれば、他に実践できる場所を探す。
↓
実践できる場所が日本のどこにもなければ、自分で作る(時が来るかもしれない)。
どこで折り合いをつけるのかは、結局のところ自分次第です。