「帰国子女」という言葉を聞くと、真っ先に思い浮かぶの英語がペラペラというイメージ。
でも実は、帰国子女でも英語が話せない人はたくさんいます。
英語が話せないまま日本に帰国すると、「帰国子女なのに英語できないの?」とバカにされたり、本人の努力が足りなかったせいだと勝手に決めつけられ、的外れな評価をされている印象です。
私がインターナショナルスクールや国際学校で見た英語ができない帰国子女には、「そりゃ英語ができるようにならないよね」と納得するいくつかの理由がありました。
そこでこのページでは、
- 帰国子女でも英語ができない理由
- 実際に英語がペラペラ(ネイティブレベル)の帰国子女はどんな生徒?
- 英語ができない帰国子女の現地での苦労
- 英語ができない帰国子女が英語を話せるようになった方法
についてお話ししようと思います。
目次
帰国子女なのに英語ができない理由
まず、帰国子女でも英語が話せない人がいる理由についてお話しします。
1. 英語圏以外の国に渡航した
保護者のお仕事の都合で海外に渡航する場合、アメリカやイギリスなどの英語圏に行けるわけではありません。
中国・台湾・香港・インド・マレーシア・ベトナム・タイ・インドネシアなどのアジア圏、ドイツ・スペイン・イタリアなどのヨーロッパ圏、中東を代表するドバイ・アブダビなど、英語圏以外の国で学生時代を過ごした帰国子女が何人もいます。
現地での公用語は英語以外の言語となり、家での家族との会話は「日本語」。
そうなると、英語に触れる機会はほぼゼロです。
日本企業の海外進出は、物価の安い東南アジアを中心に進んでおり、家賃や人件費の高い欧米諸国からは次第に撤退しています。
インターナショナルスクールに問い合わせをしてくる日本人家庭は、英語圏よりもアジア・ヨーロッパ等の非英語圏からの方が断然多いのです。
2.日本人学校に通っていた
帰国子女でも英語ができない理由の2つ目は、「日本人学校に通ったから」。
実は、アメリカやイギリスなどの英語圏に住んでいても、日本人学校に通う生徒も多く、海外でも日本語で教育を受けることができます。
日本人学校に通うと、日本人が(勝手に)イメージする「ネイティブのような英語が話せる帰国子女」になるわけではありません。
ですが、英語はできなくても、他の言語が堪能な帰国子女もいます。
面接時のスピーチでは(学校によっては)生徒が一番得意とする言語でもOKな場合があり、フランス語や中国語・ドイツ語でスピーチする生徒もいるほどです。
3.英語準備コースに通えなかった
例えば、オーストラリアで現地校に進学する場合、語学学校の英語準備コースで英語力の向上を図ったり、現地校での授業についていけるよう、エッセイの書き方やプレゼンテーション・ディスカッション・ディベートの練習をし準備をします。
ですが、親の転勤で強制的に行く国が決まってしまう帰国子女の場合、住んでいる地域に英語準備コースがある語学学校すらないことがほとんど!
いきなり同年代の英語ネイティブの中に放り込まれ、英語の話し方も文化も授業の進み方も全くわからないまま学校生活を送ることになります。
多分、日本で教育を受けた日本人が同じ状況に放り込まれたら、東京大学・京都大学レベルの天才・秀才じゃなければ、日常生活で使われている表現や言葉を自力で拾って身に付けることは難しいでしょう。
本当に、英語を身に付けるための土台と環境・勉強法って大事です!!
ガチで英語がペラペラ(ネイティブレベル)の帰国子女はどんな生徒?
では、ガチで英語がペラペラな帰国子女はどんな生徒か、例をあげて説明します。
1.公立・私立・国際学校に在籍できない
ガチで英語がペラペラな帰国子女には、日本語が弱いという弱点があります。
教育言語が「英語」になってしまっているため、日本の公立・私立の学校や国際学校で日本語の授業を受けること自体が難しく、高い確率でインターナショナルスクールに在籍します。
でも、そこまで英語ができるようになるには、2~3年程度の海外在住期間では足りません。
小学校中・高学年から高校入学までの5年以上の期間、海外の現地校やインターナショナルスクールで学習しなければ難しいでしょう。
2.成績トップクラスの地頭のいい生徒
英語がネイティブレベルの帰国子女のもう一つの特徴は、成績トップクラスの地頭のいい生徒。
国際学校を受験する生徒の中にも、英語がネイティブレベルの生徒がいますが、高い確率で成績もトップクラス!ほとんどの教科で「A~B」をマークし、ときどき「C」があるくらいです。
でも、そんな生徒は本当に一握りで、そうじゃない人の方が圧倒的多数です。
3.勉強や対策をしなくてもTOIEC900点以上は軽く取れる
英語がネイティブレベルでペラペラな生徒の中で、TOIECのスコアを参考書類として提出していた海外インター生(高校生の年齢)がいたのですが、そのスコアは925点でした。
テスト対策はしたのか聞いたところ、何となく受けてみたとのこと。
本当にネイティブレベルなら、TOIEC試験対策をすることなく900点を超えるスコアを叩き出すようです。
【英語どころではない】帰国子女の海外生活の苦労
海外に出たことがない日本人には想像ができないかもしれませんが、帰国子女たちには「海外生活の苦労」というものがあります。
ここからは、インターナショナルスクールで出会った日本人家族に聞いた、赴任先の海外での苦労について紹介します。
1.治安が悪い国では安心して外出できない
先ほどもお話ししましたが、帰国子女たちが渡航する国は、アメリカやイギリスなどの先進国(英語圏)だけではありません。
- インフラが整っていない国
- 貧富の差が激しい国や地域
- 軽犯罪の多い国や地域
上記ような国に渡航すると、子供が安心して1人で外を歩けないという環境下に身を置くことになります。
そんな国や地域では、行動は常に保護者と一緒が当たり前になることもあるのです。
2.世界情勢によって治安が急激に悪化することがある
貧富の差が激しい国や地域に渡航している場合、世界情勢・国内の情勢・経済の変化により治安が急激に悪化するということがあります。
記憶に新しい「新型コロナウィルス」の例を挙げると、以下のような状況が実際に起こるのです。
ロックダウンにより地元の人たちの仕事がなくなる
↓
収入がなくなる
↓
家庭の経済が困窮する
↓
スーパーマーケットで入店待ちの列に並んでいるだけで強盗に襲われそうになる
上記は、実際に出会った「コロナのせいで海外から緊急帰国」を経験した日本人家庭のお母さんに聞いた実話。
家族の身の安全を守るために、お父さんだけ赴任期間が終わるまでその国に残り、お母さんと子供たちは緊急帰国したそうです。
3.家以外では日本人学校だけが居場所
- 治安があまり良くなく子供が安心して1人で出歩けない国や地域
- 貧富の差が激しく軽犯罪が多い国や地域
そんな地域で生活している子供たちは、家以外での居場所は日本人学校だけということもあります。
日本で生活していれば、子供たちだけで公園に行き思いっきり走り回って遊ぶことが可能ですが、
- 日本人学校の敷地内だけが思いっきり走り回れる場所
- 日本人学校だけが友達を作る場所
- 日本人学校だけが家以外でのコミュニティー
という環境で生活をしている子供たちもいます。
まずは、子供が海外の環境に慣れることが先なので、「英語がどう」とか言ってる場合ではないようです。
帰国子女の悩み/葛藤/本音
ここからは、インターナショナルスクールの生徒に聞いた悩みや葛藤、ホンネについてお話しします。
海外=英語圏=英語ではない
帰国子女なのに英語ができないと、日本帰国後にバカにされることがある…。
非英語圏から日本に帰ってきた帰国子女からすると「いや、私、英語圏に住んでないし、なんで英語ができないことをバカにされなきゃいけないの?」と思うそうです。
確かに、英語が話せなくても、中国語・韓国語・フランス語・ドイツ語やスペイン語が話せる帰国子女はたくさんいます。
世界共通語が「英語」なので、「なんで海外に住んでいたのに英語出来ないの?」と思うかもしれませんが、日本での生活と同じように、海外に住んでいたとしても英語を話す環境がないこともあるのです。
【本音】好きで海外に行ったわけじゃない
私は仕事上、多くの帰国子女に関わってきました。
でも、ほとんどの帰国子女は、好きで海外に行っているわけではありません。
兄弟姉妹でも、「上の子は日本の方が好きだから帰国したいけど、下の子は海外の方が好きだから残りたい」と意見が分かれるケースも聞いたことがあります。
英語がペラペラでも、「もう英語話したくないから海外の大学には行きたくない!」という大学受験生にも会いました。
日本人学校で馴染めない生徒もいます。
そのため、海外生活が嫌で嫌で仕方がないケースも数多くあるのです。
帰国子女や海外に出た人への期待値が高すぎる
海外を知らない日本人にとっての海外のイメージは、アジア・南米・アフリカなどの国々を除外した「英語を話す白人さんがいる国」ばかり。
それでいて、「帰国子女」「海外に出た人」=英語が話せて当然と、期待値が高すぎる印象です。
日本人だって、日本語を間違える。
そして、世界共通語は「英語」ですが、教育水準の高い日本に住む日本人だって、英語が話せる人(英語を使って仕事ができたりコミュニケーションが取れる人)は少ない。
日本よりも治安・生活水準・教育水準が低い国での生活を強いられた帰国子女の状況を考えず、「英語ができるか?」ということばかりに目を向けるのは、少々酷なのでは?と感じました。
日本では、「海外に行くだけで英語ペラペラになれる」と誤解をしている人が多く、英語が話せない帰国子女がバカにされることがあるようですが、海外で日本語力が落ちないようにすることも努力の一つ。
また、海外で英語ができるようになったため、逆に日本帰国後に苦労しているケースもあるのです。
英語ができない帰国子女が英語を話せるようになるまでの行動
私の友人や同僚には、英語ができないまま日本に帰国したけれど英語を話せるようになった帰国子女が何人もいます。
行動としては、「環境を整えた」が一番近いでしょう。
- 外国語大学に進学
- 自ら海外留学→翻訳レベルまで上げた
- ワーホリで海外に活き自力で現地で働く
でも、ほとんどゼロの状態から英語を話せるようになった背景には、英語を話すための勉強法で、英会話学習と英語を話す練習を継続させたという裏側があります。
継続させる一番手っ取り早い方法は、英語を話す環境を整えることです。
帰国子女で英語がペラペラな人は、英語が話せるようになる環境にいたのと同じように、帰国子女でも英語ができない人は、英語が話せる環境にいることができなかった、ただそれだけです。
つまり、「環境」ってかなり重要!
入り口は帰国子女でも帰国子女じゃなくてもみんな同じなので、今英語ができなくても、これから「英語をやる環境」を整えれば大丈夫です!