
子供の頃から日本語と英語に触れ、日本に居ながら国際的な感覚を養えるインターナショナルスクール。
近年は、海外経験のない日本人家庭からの問い合わせが増えてきています。
ですが、「英語」ばかりに意識を向けがちで、インターナショナルスクールに通わせることの大変さやデメリットが見えていないということに気づきました。
そこでこのページでは、インターナショナルスクールに勤めてこの目で見た実際のところと、メリット・デメリットを詳しく解説していきたいと思います。
目次
インターナショナルスクールに子供を通わせる家庭の特徴
まずはじめに、インターナショナルスクールに子供を通わせている家庭は、そんな家庭が多いのか?をお話ししたいと思います。
1.両親のどちらかが外国人
日本のインターナショナルスクールに通う半数近くの生徒は、両親のどちらかが外国人。
- 日本人×アメリカ人
- 日本人×イギリス人
- 日本人×オーストラリア人
上記の例ように両親のどちらかが英語圏出身者の場合、子供は日本語も英語も話せるけど、教育言語を「英語」にしているという理由からインターナショナルスクールで学んでいます。
また、両親のどちらかが外国人でも、英語圏出身ではないケースもあります。
- 日本人×中国人
- 日本人×イスラエル人
- 日本人×ドイツ人
- 日本人×香港人
上記のような家庭の場合、お父さんとお母さん同士の家での会話が「英語」となるので、教育言語も「英語」にした方が家族でのコミュニケーションが取りやすくなるのです。
※日本在住歴が長く日本語が堪能になり、家での会話が「日本語」となる家庭もあります。
2.海外から日本に仕事で来る外国人駐在員
インターナショナルスクールに通う生徒の特徴2つ目は、保護者が海外から日本に仕事で来る外国人駐在員。
中国・インド・東南アジア・ヨーロッパなど出身国や地域は様々で、職業も多岐にわたります。
世界中を飛び回って仕事をしているので、子供の学校選びの選択肢がインターナショナルスクールのみ。
生徒の第一言語は保護者の出身国の言語となりますが、保護者のどちらも外国人(例:フランス人×中国人)の場合は、お父さんともお母さんとも会話が「英語」となり、日本在住歴が長くても日本語を使う機会が圧倒的に少ないのです。
3.仕事の都合で海外を飛び回る日本人家庭
インターナショナルスクールにも、純日本人の生徒は在籍しています。
その多くは、保護者の仕事の都合で海外を飛び回っている生徒で、家での会話が日本語なので「日本語会話」は普通にできます。
ですが、幼少期の頃からずっと海外の現地校やインターナショナルスクールで教育を受けてきたため、教育言語が「英語」となり、日本の公立中学・高校での日本語の授業について行くのが難しい生徒が多いのです。
また、今はまだ日本で働いているけれど将来的に海外を飛び回る可能性が高いため、幼稚園からインターナショナルスクールに入れて慣れさせておくという考えの日本人家庭もあります。
4.お金持ちや経済的余裕がある家庭
インターナショナルスクールには、両親のどちらかが外国人の子供、仕事の都合で日本に来ている外国人駐在員の子供、海外を飛び回る純日本人家庭の子供など、様々なバックグラウンドの生徒が通っています。
ですが、すべての家庭に共通していることは、家がお金持ちもしくは経済的に余裕がある点です。
保護者が弁護士や医者・会社経営者という家庭もありますが、おじいさまが孫の教育費を出しているケースもあります。
また、会社員の場合でも、お勤め先の企業(外資系企業のケースをよく聞きます)が社員の子供の学費を負担してくれることもあるのです。
インターナショナルスクールはそれぞれの学校で入学基準があるため、お金があっても入学条件を満たさなければ入学試験さえ受けることができない学校もあります。
インターナショナルスクールのメリット
次に、インターナショナルスクールのメリットを紹介します。
1.【英語は当たり前】英語で「何か」を学ぶことができる
インターナショナルスクールには、日英バイリンガル教育をする学校と、英語ができることが前提のネイティブ教育をする学校があります。
日英バイリンガル教育をするインターナショナルスクールは、英語ができない生徒に日本語サポートをする学校や日英バイリンガルの日本人教師がいる学校もありますが、ネイティブ教育をするインターナショナルスクールは、基本的には英語で授業を受けることが前提です。
ちなみに、私の勤務先のインターナショナルスクールでは、英語が弱い日本人生徒を日本語でサポートすることはありません。
つまり、英語ができるようになる教育をしているのではなく、英語はできて当たり前。
それ以上に、英語で何かを学ぶというメリットがあるのです。
2.日本の学校では身につかない素養が身につく
インターナショナルスクールのメリットの2つ目は、日本の学校では身につけることが難しい素養が身につく点です。
- 寛容性
- 自分軸を持つこと
- 自分の考えを述べること
- 自分から行動すること
- 責任感
小学校から高校まで授業や学校生活の中で、これらの素養が身についていくのです。

3.圧倒的に視野が広がる
インターナショナルスクールに通うと、海外から日本に来ている生徒やダブル国籍の生徒と毎日を過ごすことになります。
生徒同士のバックグラウンドが異なれば考え方も異なり、その中で生活していると自然に日本以外の文化に触れることになるのです。
カリキュラム自体も日本の学校とは違い、海外にも目が向くので、圧倒的に視野が広がります。
インターナショナルスクールのデメリット
残念ながら、インターナショナルスクールにはデメリットというものも多くあります。
1.費用(学費)が高額
インターナショナルスクールの学費は、年間で約200万円。
Kindergarten(キンダーガーテン:幼稚園)
↓
Elementary School(エレメンタリースクール :小学校)
↓
Middle School(ミドルスクール:中学)
↓
High School(ハイスクール:高校)
学年が上がるにつれて高くなっていきますので、幼稚園から高校卒業までの14年間インターナショナルスクールに通わせると、学費だけで2800万円と高額になります。
考えるべきなのは学費だけでなく、フィールドスタディやサマープログラム等に参加する際の費用。
入学時にかかる入学金も含めると、初年度は250万円近くなるのです。
2.第一言語(日本語)が確立しない可能性
日本でインターナショナルスクールに通わせ、教育言語を「英語」にするということは、第一言語である日本語が確立しない可能性があります。
幼稚園や小学校低学年の頃からインターナショナルスクールに通わせている場合は、自分の気持ちを英語で表現する方が得意になる子供が多いので、第一言語が英語になってしまえばそれはそれでOK!
ですが、小学校高学年あたりからインターナショナルスクールに通い始め、数年経った時に日本語でも英語でも言いたいことを完全に表現できないというケースもあります。
すべての子供がそうとは限りませんが、私の友人の帰国子女(日中ネイティブ)の第一言語確立までの苦労話がありますので、参考までに読んでみてください。
3.高校生になって授業についていけなくなることもある
インターナショナルスクールで長年教育を受けている生徒の中には、高校生になってから高度な英語の授業についていけなくなる生徒がいます。
海外から日本に来た外国人生徒や、純日本人の生徒は、英語ネイティブの生徒に比べると英語力が弱いという点で不利になってしまいますよね?
英語以外の科目(例えば理数系)が得意など何かしらの強みを持っていれば、「英語」という弱点をカバーすることは可能ですし、生徒本人の自信にも繋がります。
ですが、英語力がさほど伸びていないまま高度な授業を受けると、授業内容が理解できずついて行くことが難しくなり、最悪の場合留年になるケースもあるのです。
4.日本の大学進学を考えるなら不利
インターナショナルスクールへの問い合わせで、「将来的には日本の大学に進学させたいけど、今の時代は英語だから子供の頃から英語教育をさせたい」と希望している人がたまにいます。
ですが、日本の大学進学を考えるなら、インターナショナルスクールに通う必要はありません。
むしろ、インターナショナルスクールに通うと、日本の大学進学の選択肢が狭くなります。
また、日本の高校に通い大学受験のための勉強をしてきた人たちと違い、センター試験で戦うという点においては圧倒的に不利!!
海外からの帰国子女が日本の大学への進学を希望する場合でも、なるべくセンター試験で戦わなくていいよう、帰国子女枠や指定校推薦を目指すのです。
日本の大学進学が視野に入っているのなら、インターナショナルスクールはベストな選択ではありません。
5.発音がネイティブ並みは将来不利になることもある
幼少期の頃から英語を学ばせ英語耳を作り、ネイティブのように綺麗な発音ができることは理想的ですし、英語を学ぶ者なら誰しも一度は憧れると思います。
ですがこの「発音がネイティブ並」という部分だけでは、将来不利になるケースがあります。
ビジネスの場において大事なのは、発音の綺麗さよりも高度な文章を組み立てて話すことができるかどうか?
極端な話、発音に日本語訛りがあっても、高度な言い回しができたり高度な文法を使える方が、英語の習得度合いを評価され頭の良さも伝わります。
「この人、英語は第二言語なのに、こんな難しい言い回しを使いこなせるんだ」と、相手から一目置かれることもあるのです。
英語の発音はネイティブ並という点だけでは将来不利になってしまう可能性があると、頭の片隅に入れておきましょう。
子供をインターナショナルスクールに入れる前に考えるべきこと
子供が英語を話せるようになれば、学校生活は問題ない!と思われがちですが、実は保護者は子供の学校生活を支えるという大事な役割があります。
1.学校からの案内や書類は全て英語
インターナショナルスクールに日本人スタッフがいれば、入学前の問い合わせも学校見学も日本語で対応してもらえます。
日本語も英語もできない日本に来たばかりの外国人家庭でも、通訳を連れて学校見学や入学試験に来ることもあるので、子供が入学試験に合格すれば入学すること自体は可能です。
ですが、入学後の案内や書類はすべて英語になります。
インターナショナルスクールの校長・教頭先生からの文書(メール)や担任の先生からの連絡も英語になりますが、その都度日本語でサポートがあるわけではないのです。
2.子供の学習サポートは可能か?
インターナショナルスクールに通う子供は、英語で授業を受けます。
そこで考えなければいけないことは、家庭での学習サポートが可能かどうか。
特にエレメンタリー(小学生)の頃は保護者の手助けを必要とする機会が多くあるのです。
3.保護者同士の付き合い
日本の学校と同じように、インターナショナルスクールでも保護者同士の付き合いがあります。
日本人のお父さん・お母さんも多いので、何かわからないことがあっても助け合うことは可能ですが、すべて日本語というわけにはいきません。

4.子供がインターナショナルスクールになじめない可能性
幼少期の頃からプリスクールに通い、その後も引き続き英語で教育を受けるのなら、すでにインターナショナルな環境には慣れていると思うので、大きな問題はないかもしれません。
ですが、忘れてはいけないことは、学校によって「色」があるということ。
1学年1クラスの少人数制の学校もあれば、日本の学校と同じようにクラス分けのある学校もあったり、寮付きの学校もあります。
子供が小さいうちなら、数ヶ月もすれば環境に適応することは考えられますが、学校に馴染めなくて自主退学という選択をする家庭もあるので、頭に入れておきましょう。
5.日本語の教育に戻る選択肢
学校では英語、家では日本語なので、英語も日本語も中途半端で自分の考えや思っていることを言葉で表現できない…というケースが、小学校高学年~中学生ぐらいの年齢になると稀に出てきます。
こうなった時には、日本語の教育に戻るという決断をすることも必要です。
実際、「日本の学校に入れる選択肢はない」という考えの家庭の子供が、高校生になって高度な英語の授業についていけず、苦労している例もあります。
また、子供が「英語を話したくない」「英語で勉強したくない」と心の中で思っていることもあるので、子供の気持ちを優先させてあげましょう。
子供をインターに入れたい理由が「今の時代は英語」なら注意
インターナショナルスクールで電話を取っているとよく聞く「今の時代は英語だから」という問い合わせ理由。
英語教育自体は悪いことではないですし、そういった考えでインターナショナルスクールに入学させても問題なく英語を習得する子供はいると思います。
幼少期の頃から英語で教育をさせることは、大人になってから英語を勉強するより定着が早いことは確かですが、「今の時代は英語」という考えなら、優先させるべきなのは第一言語の確立です。
また、インターナショナルスクールは、英語を学ぶ場所ではなく、英語で教育を受ける場所と覚えておきましょう。
子供だけに英語教育させるのでなく親も一緒に英語を頑張りましょう!
今は英語ができるだけではダメな時代で、将来グローバルな環境に身を置くなら英語ができることが当たり前となっています。
幼少期の頃から英語に触れさせること自体は悪いことではありません。
ですが、子供に英語教育させたいのなら、保護者も一緒に英語を頑張りましょう!
2つの言語を習得することや、第二言語(英語)で何かを学ぶことの辛さや苦しさは、経験している人にしかわかりません。
インターへの問い合わせを日本の公立学校の先生にお任せする
やり取りは全部日本人スタッフと日本語でやる
という甘えを捨てて、子供と一緒に「英語」を頑張って英語教育に対してもっと深く理解すると、子供のインターナショナルスクールでの学校生活や学習サポートに役立つこと間違いなし!です。