中学生や高校生の頃から海外留学することは、将来グローバルに活躍したい子供にとっては、英語力の向上と国際感覚を身につけるいい機会です。
しかし、日本のインターナショナルスクールで入学・広報の仕事をし、入試のたびに海外留学が上手くいかなくて悩んでいるケースが必ず1件ある現実に衝撃を受けました。
親の仕事の都合(海外転勤)で帯同するケースとは異なり、個人留学は「海外の学校に行って何を得たのか」が重要です。
そこでこのページでは、中学・高校留学でおすすめのケースとやめた方がいいケースを紹介します。
この記事を書く私は、
- オーストラリアの語学学校で営業&マーケティング兼日本人カウンセラー
- ファンデーションコースで現地校入学を目指す日本人中高生のサポート経験あり
- インターナショナルスクールの入学担当
- 元子ども英会話講師&英語講師
といった、留学前・留学中・留学後の英語教育関係の仕事に関わってきたため、リアルな情報を伝えられると思います。
中学・高校留学をおすすめできるケース
中学・高校留学をおすすめできるケースを紹介します。
- 子ども本人が望んでいる
- 春・夏・冬休みを利用した短期留学
- 海外の教育を受けること(英語で何かを学ぶこと)が前提
1.子ども本人が望んでいる
海外留学を子ども本人が望んでいる場合、どんどん挑戦して良いと思います。
子ども本人が本気で中学・高校留学を望むと、
- 自ら英語の習得に励む
- 海外の学校で積極的に学習する
- どんどん吸収すると成績向上にプラスの影響となる
といったメリットがあります。
注意
子ども本人が望んでいるという「タテマエ」で留学する場合、結果が出なかったり帰国後に見抜かれることもあるので、ちゃんと子どもの意志を尊重することが必要です。
2.春・夏・冬休みを利用した短期留学
長期的に留学するのは難しいけれど、海外経験はさせてみたい。
そう思うなら、春・夏・冬休みを利用した短期留学から始めても遅くはありません。
海外の語学学校には、中学・高校生向けの「ジュニアプログラム」を提供している学校があります。
また、「親子留学」で子どもと一緒に海外経験をすると、保護者自身も留学がどのようなものかを経験した上で検討できるため、いい影響になるでしょう。
私が勤めていた語学学校では、短期留学を経験した中学・高校生の中で、本格的に長期留学(正規留学)をするために戻ってくる人は1~2%だったので、お試しは大事だと思います。
3.海外の教育を受けること(英語で何かを学ぶこと)が前提
中学・高校留学では、英語で教育を受けることが前提です。
授業スタイルは日本と異なり、
- リサーチ
- プレゼンテーション
- ディベート・ディスカッション
- フィールドスタディ
- プロジェクト
- エッセイ
といった実践的な授業が初等教育から展開されています。
実際のところ、自分の頭で考える授業は「キツイ」といった声も聞くため、そういった教育を求めるならば合っているでしょう。
中学・高校留学でやめた方がいいケース
中学・高校留学に行く理由が以下のような理由なら、一度しっかり考え直した方がいいかもしれません。
- 帰国子女枠狙い
- 現地の学校の卒業を目指さない
- 英語力を身につけるため「だけ」
- 英語ができないのに個人留学でいきなり現地校
1.帰国子女枠狙い
進学を希望する学校・大学の帰国子女枠狙いで留学するケースは、残念ながらゼロではありません。
過去の経験者がすでに多くの実績を残しており、私自身も、保護者が「御校に入るために海外留学していたんです」という問い合わせ電話を受けたことがありました。
もちろん、本気で個人留学をしているケースもあるので、すべてが帰国子女枠狙いではないと理解しています。
ただし、子どもが望んだ個人留学なのに、英語が思ったほど伸びていなかったり、成績や成長が芳しくないと、「帰国子女枠狙いでは?」と疑問視される可能性もあるのです。
2.現地の学校の卒業を目指さない
個人留学をしている中学生・高校生の場合、子ども本人が本気で希望しているなら、現地の学校の卒業を目指して渡航しています。
逆に、あと1年で卒業なのになぜ卒業を目指さないのか?というケースも一定数ありました。
もちろん、元々1~2年のお試しで留学する予定だったり、現地で生活しているうちに様々な変化(例:家庭の事情、金銭的な問題)など、帰国する理由はそれぞれです。
注意しなければいけないのは、編入が難しい高校生のケースです。
とくに高校3年生への編入は、空きがなかったり、そもそも受け入れていなかったりで、選択肢が少なくなることも忘れてはいけません。
また、時期や学校によっては高校2年生でも難しいため、
- 現地の高校卒業を目指すこと前提で考えておくこと
- 万が一帰国することになった場合にどんな選択肢があるかを予めリサーチすること
をおすすめします。
3.英語力を身につけるため「だけ」
教育機関として国や国際団体に認可された学校ならば、英語力を身につけるため「だけ」の中学・高校留学をおすすめしない傾向が強いです。
※注:少なくとも、私の勤務先は推奨していませんでした。
英語「だけ」のためなら、中学・高校留学である必要はなく、そもそもの正規の中学・高校留学の本質とズレています。
また、英語を身につける「だけ」なら、日本に居ながらでも実現可能です。
中学・高校で正規留学できなくても、子どもが本気なら「海外の大学に進学したい!」と言い出すかもしれませんし、大人になってから海外就職を選んだり、海外転勤のあるグロ-バル企業への就職を希望することもできますよ。
4.英語ができないのに個人留学でいきなり現地校
国によっては、英語ができない海外の留学生でも、個人留学でいきなり現地校への入学ができてしまうことがあります。
もちろん、入学の許可が下りているので、それ自体は問題ではありません。
大変なのはそこからで、
- 慣れるまでに数ヶ月かかる
- 英語ができないので最初は成績が落ちる
- 授業についていけなくなる
- 本来の成績まで戻らない
といった中学・高校留学生のケースが多数発生している留学先もあります。
留学エージェントの言葉を鵜呑みにして個人留学し、上手くいかなくて帰国しても、帰国後の編入先が見つからず、試験に落ちた後に電話で「なんとかなりませんか?」と懇願するケースも1件や2件ではありません。
日本で英会話レッスンや英語の授業を試してからでも遅くない
私は大人になってから自らの意志で海外に出て、現地の会社で働いてきたので、「中学生や高校生の頃に海外留学をして、ガッツリ英語環境に身を置く機会があったらどんなによかっただろう…」と時々考えます。
日本を離れ海外で教育を受けることは、メリットばかりではなくデメリットもあり、言語の面でも精神的にも苦労があります。
また、その後の子どもの進路にどのような影響を及ぼす可能性があるかも考慮しなければいけません。
本気で海外に出たい子供なら、小学校・中学・高校でしっかり勉強した後に海外の大学に進学という選択でも全然遅くはないです。
海外の大学に進学できず(進学せず)、学生のうちに「留学」という夢が叶わなかったとしても、本当に海外に出たいなら、社会人になってから自ら進んで海外に出ていくと思います。
もしかしたら「留学」という形で海外に出るのではなく、「海外就職」かもしれません。
「グローバル人材」「グローバル教育」と言われている時代なので、「今の時代は英語」と思ってしまうかもしれませんが、一番大事なのは、教育の基盤をしっかり固めて子供が本来の力を発揮することです。